シニアマーケティングとは?シニア層を惹きつけるために必要な4ステップ

シニアマーケティングは、超高齢社会を迎えた今、成長市場として注目を集めています。しかし、「シニア層」をひとくくりにした従来のアプローチでは、多様で複雑な価値観を持つシニアの心には響きません。シニア層特有のニーズやライフスタイルを理解し、共感を生むためには、どのような戦略が必要でしょうか。この記事では、ハルメクグループが考えるシニアマーケティングとは何かという基本から最新トレンド、成功に導くための4ステップや注意点、そして成功事例などを解説します。 

目次

シニアマーケティングとは?

シニアマーケティングとは、65歳以上のシニア層を対象にしたマーケティング戦略です。シニアのライフスタイルや価値観、消費行動を深く理解したうえで商品開発や広告戦略を立案し、ターゲットへアプローチすることが求められます。

マーケティングの新しい視点

2024年、日本マーケティング協会はマーケティングの定義を「市場創造」から「価値の創造」へと刷新しました。これにより、マーケティングの役割は「企業の利益追求」から、顧客や社会と共に価値を生み出し、持続可能な社会を実現するプロセスへと進化しています。

新しい視点では、社会と顧客を巻き込みながら、広く価値を浸透させ、顧客・従業員・株主・地域社会といったステークホルダー全体との信頼関係を築くことが重視されます。 

  

このような視点は、ハルメクグループがこれまで実践してきたことでもあります。ハルメクは、シニア層に特化した雑誌、物販、コミュニティ事業を通じて、単なるビジネスの枠を超えた「シニア女性がよりよく生きる」価値創造を目指してきました。シニアマーケティングにおいても、シニア層の価値観に寄り添い、共創の視点から社会全体に役立つアプローチを模索しています。 

シニアマーケティングが重要な理由

シニア層の中には長年の貯蓄や年金で経済的に安定し、購買意欲の高い層も多く存在します。その消費行動は、子や孫世代にも影響を与え、家族全体に波及することも少なくありません。しかし、シニアをひとくくりの「お年寄り」として捉える従来の方法では、多様化する価値観やニーズには応えきれません。 

  

シニア層の価値観や消費行動を深く理解し、新たな関係性を築くマーケティングがなければ、信頼関係や共感を得ることは難しく、ビジネスも成り立たない時代となっています。

シニア市場規模

日本は現在、世界でも有数の超高齢社会に突入しており、シニア市場は消費市場としてますます重要な存在となっています。



2025年には団塊世代が後期高齢者に達し、日本の総人口の約30%が65歳以上になる見込みです(内閣府の高齢化の推移と将来推計より)。この急速な高齢化は、シニア層のニーズに応じた商品やサービスの需要を今後も押し上げると予測され、シニア層を対象としたマーケティングが企業成長の鍵を握るともいえます。 



また、日本の家計金融資産の6割以上が60代以降のシニア層によって保有されており、購買力は他の世代を大きく上回っています(総務省「全国家計構造調査より)。この豊かな購買力を秘めたシニアマーケティングは、単なるニッチ戦略ではなく、日本の消費全体に大きな影響を与える可能性を秘めた分野です。シニア市場への投資は、今後の成長を支える重要な戦略のひとつといえるでしょう。 

シニア層の多様性

今や人生100年時代。平均寿命の延びとともに、シニア層の価値観やライフスタイルも一層多様化しています。



しかし、実際には、アクティブシニアと呼ばれる自立度が高いグループから、健康状態に不安を抱えるギャップシニアや介護やサポートが必要なケアシニアまで個々の状況に大きな違いがあり、それぞれの暮らし方やニーズも異なります。多様なシニア層の実情に寄り添うアプローチが、これからのマーケティングには不可欠です。 

シニアの特徴と価値観

シニア層に対しては「消極的」「保守的」「デジタルに疎い」「活動範囲が狭い」といった固定観念があります。そのため、マーケティングや社会的なアプローチでも「シニア=穏やかに過ごす」というイメージで捉えられることが多くありました。 

  

しかし、毎年ハルメクグループで発表している「シニアトレンドランキング」でも公表しているとおり、最近ではシニア世代が自らの好奇心を活かし、新しいことに挑戦する積極的で多様な姿が浮き彫りになっています。特にデジタルツールの活用や健康志向の高まりに伴い、こうした従来のステレオタイプは薄れ、シニア層のライフスタイルは非常に多様化しています。 

シニア世代のトレンドとデジタル化

従来、シニア世代のトレンドは息が長く、1年単位で変わりにくいものでしたが、近年のデジタル化と社会情勢の変化により、その変化が加速しています。 



シニア層ではSNSの利用が急増し、Instagramで自己表現を楽しむ「インスタグランマ」が増えています。また、孫や子ども世代と一緒に推し活を楽しむケースも多く、世代を超えたコミュニケーションが新たな形で根付いています。さらに、コロナ禍以降は、低金利や長寿リスクへの備えるために、老後の自己防衛策として投資を始めるシニアも増加しています。 



加えて、シニア層では「タイムパフォーマンス」ならぬ「体力パフォーマンス」を重視し、冷凍食品や総菜などを取り入れつつ体力温存を図るライフスタイルが普及しています。



こうしたデジタル活用や消費行動の変化に対応したアプローチが、シニア市場でのエンゲージメント向上に求められています。

アクティブで健康志向なシニア

また、このようなデジタル化や消費行動の変化と並行して、現代のシニア層は健康志向がますます高まっています。

単なる消費者としてだけでなく、自分自身の健康維持や生活の質向上にも積極的です。

筋トレやジョギング、ジム通いなどを日常的に取り入れ、体力維持や健康促進に熱心に取り組んでいます。

こうしたフィットネスへの関心は年々高まり続けており、シニア世代のライフスタイルはさらに進化しています。

プレシニアからシニアへの意識の変化

このような健康志向やアクティブなライフスタイルは、実はプレシニア(50歳から65歳)期から徐々に芽生えています。



プレシニア世代では、老いに対する抵抗感が強く、若さや体力を維持したいという気持ちが目立ちます。しかし、年齢を重ねてシニア世代に入ると、少しずつその変化を自然なものとして受け入れる姿勢が増えていきます。 

  

ただし、自分を「シニア」と自覚している人は少なく、どちらかというと年齢に縛られずに自分らしさを保ちながら、無理なく心地よく老いる方法を模索しています。このため、シニア世代は、身体や生活に合った無理のないスタイルを大切にしつつ、新しい知識やツールを取り入れて人生を豊かにしようとしています。

シニアマーケティング成功の秘訣

こうしたシニア層の心理やライフスタイルの変化を理解した上で、マーケティング戦略を立てることが大切です。



シニアマーケティングで成功するためには、シニア世代の特性に合わせたアプローチが欠かせません。シニアは年寄扱いを嫌う一方で、現役世代と同様のコミュニケーション方法では、メッセージが伝わりにくい傾向があります。この世代が心地よく感じる、配慮された言葉や表現が重要です。 

  

とくにデジタル施策においては、新しい言葉や概念に対するハードルが依然として高いため、わかりやすさと安心感が求められます。例えば「プッシュ通知の許可」を求めるダイアログメッセージは、内容が伝わりにくく、警戒心を抱かせてしまうことがあります。こうした場面では、より分かりやすく、安心感を与える工夫が必要です。 

 

デジタル・オフライン施策の併用 

さらに、シニアマーケティングでは、デジタル施策とオフライン施策をバランスよく組み合わせることが重要です。シニア層の中には、デジタルツールに不慣れな方も多く、オンラインだけでは十分にサポートできない場面が多々あります。そのため、状況に応じて柔軟に施策を展開し、シニア層のニーズに応えることが求められます。 



たとえば、スマートフォンの操作方法を説明する際、ウェブページ上で詳細な解説を提供するだけでは、デジタルに慣れていないシニア層には理解しづらいことがあります。このような場合、マニュアル冊子やガイドを併用することで、視覚的にわかりやすくサポートを提供できるだけでなく、安心感や信頼感も高められます。デジタルと紙媒体を組み合わせたハイブリッドなアプローチは、シニア層の理解を深め、より良い顧客体験を提供するための有効な手段です。 

安心感の提供

こうしたハイブリッドなアプローチと同様に、シニア層に対して忘れてはならないことは「安心感」の提供です。



シニア層を対象としたマーケティングでは、安心感の提供が成功の鍵を握るといっても過言ではありません。高齢者を狙った詐欺や不正行為が増加している背景から、シニア世代は新しいサービスやデジタル技術に対して強い警戒心を抱いています。そのため、安心して行動できるような信頼性の高い仕組みや、丁寧なコミュニケーションが欠かせません。 

 

たとえば、困ったときにすぐ相談できる、電話問い合わせ窓口の設置有効です。ハルメクグループの調査では「わからなかったら電話で問い合わせるほうが安心」と感じているシニア層がまだ一定数いることがわかっています。オンラインのみのサポートでは不安を感じるシニア層に対し、直接話せる窓口を用意することで、「何かあればすぐに助けてもらえる」という安心感を提供できます。デジタル施策への抵抗感を和らげ、サービス利用へのハードルを下げることが可能です。 



また、メッセージや案内文には専門用語や複雑な表現を避け、シンプルでわかりやすい言葉を使うことも大切です。 

シニアマーケティングを成功に導く4つのステップ

シニアマーケティングの成功には、シニア層を一括りにせず、多様な背景や価値観を理解し、個々のニーズに応える姿勢が求められます。シニア層には、年齢や世代による単純な括りでは捉えきれない、さまざまなライフスタイルや関心が存在します。そのため、事前調査で彼らのリアルなニーズや関心を正確に把握し、思い込みを排除した柔軟なアプローチが肝要です。 



ハルメクグループは、長年の調査とデータ分析を通じ、シニア層に響く4つのステップを確立し、効果的なマーケティング戦略を展開しています。 

STEP①:定量調査

まずは定量調査によって、シニア層の消費行動や傾向を把握します。



ハルメク 生きかた上手研究所では、年間150~200件にわたる調査プロジェクトを通じて、シニア層の価値観や行動の変化を詳細に捉えています。こうした継続的な調査から、シニア層の多様な消費傾向をデータに基づき深く掘り下げ、年齢や性別だけでは見えないライフスタイルに応じた実態を把握しています。 

豊富なデータによって、シニア層のリアルなニーズを正確に理解するための確かな基盤を提供し、マーケティング施策の効果を最大化するための知見を支えています。 

 

STEP②:定性調査

次に、数値化できない「質的な情報」を収集するために、定性調査をおこないます。ここでは、シニア層の深層的なインサイトや心理的なニーズを探り出します。データだけでは捉えきれない価値観や行動の背景に迫ることができます。 

  

ハルメク 生きかた上手研究所では、これまでシニアトレンドが比較的ゆっくりとした変化だった一方で、近年はコロナ禍や物価高騰などによって急速に変化していることに注目し、これらの変化を定性調査で詳細に分析しています。こうした調査により、シニア層の本音や生活変化の実態を的確に把握し、より効果的なマーケティング戦略を導くための深い知見を提供しています。

STEP③:商品・サービスの最適化設計orコミュニケーション実施検討

得られたインサイトと行動データを活用し、商品やサービスをシニア層向けに最適化することが次のステップです。



商品・サービスの最適化設計において、顧客の異なるニーズに対応するためには、共通部分(基本機能)とカスタマイズ部分(個別ニーズ対応)を組み合わせた柔軟な設計が欠かせません。 



また、コミュニケーション施策も同様に重要です。顧客セグメントごとの特性や行動傾向に基づき、最適なチャネル(SNS、メール、広告など)で効果的なメッセージを届ける戦略が求められます。

 

ハルメクグループは50歳以上の女性というターゲットセグメントに対し、詳細な顧客インサイトに基づくコミュニケーション戦略を展開しています。 



性調査によって得られた消費者インサイトを基に、単なる商品の紹介ではなく、顧客の感情や価値観に訴えるストーリーを通じて、ブランドとの深い関係性を築くコミュニケーション手法をとっています。 

  

これらのアプローチにより、シニア層の心に響く商品価値の提供と、共感を生むコミュニケーションを実現しています。 

STEP④:効果検証 

最後に欠かせないステップが効果検証です。



マーケティング施策の効果検証は、設定した目標が達成されているかを評価し、どの施策が成功し、どの施策が改善を必要としているかを見極めるために欠かせないプロセスです。 

  

ハルメクグループでは、独自の調査パネル「ハルトモ」を活用し、シニア層から直接フィードバックを収集できる体制を整えています。ハルトモの豊富なデータと、数値データだけでは捉えきれない質的なインサイトをもとに施策の効果を精密に検証することで、シニア層に響く戦略をさらに強化。こうした徹底した検証を通じて、精度の高いマーケティング戦略の立案と実施を実現しています。 

 

シニアマーケティングをおこなう際の注意点

シニアマーケティングを成功させるには、上記の4つのステップを実行するだけでなく、シニア層の価値観や感情にしっかり寄り添う配慮が欠かせません。 

シニアのホンネや価値観を正確に把握し、「自分ごと」として共感できるメッセージを届けることが大切です。シニア層が抱く不安や不便さに丁寧に対応し、安心感を提供する姿勢が信頼の構築につながります。 

  

また、視力や情報処理能力の低下といった身体的な変化やライフスタイルの変化にも配慮が求められます。見やすくわかりやすいデザインや情報提供を心がけ、シニア層が安心して利用できる環境を整えることで、より効果的なマーケティングが可能になります。

成功事例 

実際にハルメクグループのソリューションをご活用いただき、シニアビジネスで成功を収めた企業様の事例を3つご紹介します。

成功事例①:日清食品株式会社様

シニア層に向けて健康志向の食品を訴求したいというクライアントの要望を受け、「健康」と「手軽さ」に注目し雑誌ハルメクの紙面上でシニア層の日常に馴染むクリエイティブを展開しました。そのクリエイティブがシニア層に共感され、商品の認知度向上と購買意欲の喚起に成功。読者からの大きな反響とレスポンス増加という成果を収めました。



成功事例②:エース株式会社様

シニア層へのブランド認知度の向上を目指すクライアントの要望に応え、独自の広告戦略「作戦シート」と厳選されたモニター「ハルトモ」を活用してメディア展開を行いました。誌面で商品の魅力を効果的に伝えた結果、問い合わせ数の増加、ブランド認知度の向上、そして売上拡大を実現しました。 

 

成功事例③:日本ケロッグ合同会社様

健康志向のシニア層に主力商品のシリアルを広めるにはどうすればいいか。その解決策を求め、ハルメクグループをマーケティングパートナーとして選びました。ハルトモ向けに行った定性や定量調査、ワークショップなどを通じてシニアのインサイトを発見し、そのインサイトに刺さる新商品訴求を開発し商品戦略へと活かしました。

 

まとめ

シニアマーケティングを成功させるには、シニア層を一括りにせず、多様な価値観やライフスタイルに応じた細やかなアプローチが欠かせません。 

  

まず、定量調査で、シニア層の消費行動や傾向をデータで把握し(STEP①)、次に定性調査で数値だけでは掴めない本音やインサイトを深く探ります(STEP②)。得られたデータや知見を基に、商品・サービスの最適化設計 or コミュニケーション実施検討をおこない、シニア層に共感されるメッセージや、柔軟で魅力的な商品設計を実現します(STEP③)。そして、効果検証により、施策の成果を測定し改善につなげることで、マーケティングの精度をさらに高めます(STEP④)。 

  

さらに、シニア層にアプローチする際には、視力や情報処理の変化といった身体的負担にも配慮し、不安に寄り添ったサポートを必要とします信頼関係構築し、シニア層が「自分ごと」として感じられるメッセージを届けることで、共感を生むマーケティングが可能となります。 

  

これらの4つのステップを基に、シニア層に真に響く施策を展開し、シニアマーケティングで確かな成果を引き出しましょう。 

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シニア層へのマーケティングをお考えなら、シニア市場に深く根ざしたハルメク・エイジマーケティングへお任せください。ハルメク・エイジマーケティングはシニア層特有のニーズとライフスタイルを理解し、豊富な経験に基づいたシニア特化型コンサルティングサービスを提供しています。 

  

ハルメク・エイジマーケティングのアプローチは、シニア層のリアルな悩みやトレンドを捉え、オンライン・オフラインを組み合わせて信頼関係を築く独自のスタイルです。雑誌や物販事業を通じて培った「伝わる広告」づくりのノウハウを活かし、紙面広告、通販、ウェブの全方位でターゲット層へ直接アプローチできる点が強みです。さらに、広告出稿後の精緻な分析・フィードバックにより、施策の効果を最大化し、貴社のマーケティング目標達成をサポートします。 

  

豊富なデータと実績に裏打ちされた戦略で、シニアマーケティングを成功へと導きます。シニア層への的確なアプローチや資料請求のご相談は、ぜひハルメク・エイジマーケティングにお任せください。 

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この記事の監修者プロフィール

シニアマーケティングLAB事務局

シニアマーケティングラボ事務局

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